キリシタン版文字論の集大成

last update 2020/11/06(金) 10:32:54JST

上智大学 学術研究特別推進費重点領域研究(2019~2020年度)
研究代表者:豊島正之(上智大学文学部国文学科教授)

要約

上智大学キリシタン文庫は、世界で唯一、 キリシタン版の全時期・全種の活字印字例が揃うコレクションである。 本重点領域研究は、この幸運な状況を最大限に活用して、 キリシタン版が印刷した語彙・文字・異体を、その時期・種類ごとに整理し、 語彙史・文字史・印刷技術史の中に位置付けようとするものである。

主要なキリシタン版の刊行時期と文字種

W は欧州製活字、Jは日本製活字。

年紀刊行地書名イタリック漢字キリシタン文庫所蔵
  国外にて印刷
1586リスボンCatechismus Christianae fideiWW
1590マカオDe missione legatorum
  これより本邦・前期版(活字は、仮名漢字を含め、全て欧州製)
1591?加津佐?初期祈祷文W
1591?加津佐どちりなきりしたん(国字本)W
1591加津佐サントスの御作業
1592天草ドチリナ・キリシタン
1593天草平家・イソップ・金句集
1593?天草ばうちずもの授けやうW
  これより後期版(活字に日本製を含む)
1594天草ラテン文典J第1種
1595天草ラポ日対訳辞書J第1種
1596天草?コンテンツスムンヂJ第1種
1596天草?Compendium spiritualis doctrinaeJ第1種
1598長崎さるばとるむんぢ(国字本)J
1598長崎落葉集(国字本・漢字字書)J
1599長崎ぎやどぺかどる(国字本)J第2種(大文字)J
1600長崎どちりなきりしたん(国字本)J
1600長崎ドチリナキリシタン(ローマ字本)J第1種・第2種(大文字)
1600長崎朗詠雑筆(国字本)J
1603長崎日ポ辞書J第2種
1604長崎日本大文典J第2種
1605長崎Manuale ad sacramenta ecclesiae ministrandaJ第2種
1607長崎スピリツアル修行J第2種
1610長崎FlosculiJ第2種
1611長崎ひですの経J第2種J

既に行なった国際シンポジウム(2019年度)

International symposia : 国際シンポジウム "Vocabulário da língua de Japão" (1603) : a Missionary Linguistic approach キリシタン版「日ポ辞書」の世界 -- 宣教に伴う言語学の視点か (2020年2月21日上智大学四ツ谷キャンパス、2月23日上智大学大阪サテライトキャンパス)

2018年にブラジル国立図書館(Rio de Janeiro, Brasil)に見出されたキリシタン版「日ポ辞書」をめぐって、 ブラジル国立図書館館長、図書館財団理事長をお招きし、併せて広島大学・大阪大学・上智大学から研究者が参加して、書誌学・宣教に伴う言語学・辞書学・文法史学の面から討論を行なった。

尚、今年度も、研究を締め括る国際シンポジウムを計画していたが、COVID-19のため、見送る事とした。

構築中の情報リソース

  • これらのリソースには、 Sophia Open Research Weeks 2020 の期間に限定して、公開しているものを含みます。
  • 権利関係から、リソースの一部が欠落している様に見えるものを含みます。
    1. キリシタン版総語彙 (一部のリソースは、権利関係から、欠落している様に見えます)
      上記キリシタン版のうち、辞書・文法書以外の書の語彙データベース。Manuale ad sacramenta ministranda, Flosculiなどのラテン語版も含む。
    2. キリシタン版国字本全漢字(準備中) (一部のリソースは、権利関係から、欠落している様に見えます)
      漢字全文字の活字データベース。
    3. 対訳ラテン語語彙集
      キリシタン時代の多言語辞書データベース。上記キリシタン版のうち、ラポ日対訳辞書・日ポ辞書を含む。Calepinusは、現在1592年ベネチア版のみであるが、1580年リヨン版も追加入力中。
    4. イベリア半島でのラテン文法
      キリシタン時代の前後にイベリア半島で用いられたラテン文法書。キリシタン版「ラテン文典」(1594)の底本となった、Alvaresラテン文典の「大文典」(1575年ベネチア改訂版)・「小文典」(1578年スペイン語対応版、1583年ポルトガル語対応版)を含む。科学研究費17H02341、20H01267による研究成果と統合。
    5. 日本近代辞書・字書集
      幕末・明治期の対訳辞書・普通語辞書のデータベースを構築して、同じく対訳辞書であるキリシタン版の辞書との対照研究リソースとする試み。いずれも、対訳原語(例:英語)よりも検索可能とする。
      中村正直(明治十二・1879)「英華和訳辞典」(入力中)、高橋五郎(明治二十一・1888)「漢英対照いろは辞典」(構築中)、大槻文彦(明治二十四・1891)「言海」(構築済)。

    mtoyo@joao-roiz.jp